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21世紀の曙日本
2019年06月14日(Fri)
【70歳以上の厚生年金加入に待った!企業頼みの社会保障改革は誤り】
厚生労働省は、一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も年金保険料の支払いを義務付ける検討を始める、と報道されている。現在、70歳になると働いていても公的年金の保険料は支払わなくてよい。それを、70歳以上になっても年金保険料を支払うことで、保険料の納付期間が延び、受給できる年金額を増やせる点に着目した改革案である。
 安倍晋三政権は、昨秋以降、「生涯現役社会」の実現に向けた諸改革を検討している。生涯現役社会の実現とは、いくつになっても意欲さえあれば働ける環境を整えることを意図している。しかも、働ける環境を改めるだけでは、延び続ける健康寿命に備えて老後生活には対応できないため、年金制度の改革の検討も始めている。
 冒頭の報道も、その流れを受けてのものといえる。生涯現役時代に対応した年金制度をどうするかは、極めて重要だ。老後の生活設計をする上でも、多くの人が影響を受ける。しかし、取れるところから取ればよいとか、無から有が生まれるかのような錯覚は、かえって事態を悪化させる。
事業主負担保険料が
歪めてきた働き方
 70歳以上も年金保険料の支払いを義務付ければ、その分退職後に受け取れる年金給付が増えて老後の生活をより充実させられる。一見そう見えるが、そこには「隠れた負担」がある。年金保険料は、労使折半になっているからである。
 会社員などが加入する厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者本人とが半分ずつ負担する。70歳以上でも年金保険料の支払いを義務化するということは、本人のみならず、雇い手である事業主も保険料を負担することになる。
 一見すると、半分だけ自分が負担すれば、残りは雇い主が払ってくれて、それによって受け取る年金額が増える。しかし、現実はそんなに甘くない。
 事業主負担保険料は、バブル崩壊以降の日本の働き方を大きく歪めてきた。事業主負担保険料は、年金だけではなく、医療保険も介護保険にも同様にある。加えて、会社員などが入る雇用保険は本人負担が1に対し、事業主負担は2と、事業主負担保険料が多くなっている。こうしたわが国の社会保険料の事業主負担は、欧州先進国並みの高水準に近づきつつある。
 実は、1990年代以降、こうした事業主負担保険料の増加が、非正規雇用者の増加という問題をもたらしてきた。なぜなら、非正規雇用者には事業主負担保険料を拠出しなくてよいからである。バブル崩壊後に経営難に陥った企業は、人件費削減の一策として、事業主負担保険料の支払いが必要な正規雇用者を減らし、非正規雇用者に代替することでリストラを進めた。
わが国では、年金、医療、介護の社会保障は、対象者は全員加入が義務付けられているから、非正規雇用者も社会保障の恩恵にはあずかれる。しかし、事業主負担保険料のある被用者保険には、非正規雇用者は加入できないため、本人負担のみの社会保障制度にしか入れない。その結果、年金では、本人負担分の少ない保険料しか納められないから、老後の年金給付も少なくなる。医療や介護では、事業主負担保険料がない分より多く保険料を支払わなければならないことになる。社会保障制度において、非正規雇用者は、正規雇用者に比べて冷遇されている。
 非正規雇用化は、別のところにも悪影響が及んだ。それは、生産性の低迷である。正規雇用者は、長期に継続して雇用されることが前提だから、OJT(職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育)が受けられ、労働者としてのスキルを蓄積できる。しかし、非正規雇用者は、契約期限が切れて再雇用されなければ、それ以上OJTは受けられず、スキルの蓄積も阻まれる。
 既にシニア労働者では非正規雇用が広がっている。65歳以上の雇用者について雇用形態をみると、非正規の職員・従業員は多く、かつ、増加傾向である。総務省労働力調査によると、2016年では正規の職員・従業員が99万人に対して、非正規の職員・従業員が301万人であり、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は75・3%となっている。
これらを踏まえると、70歳以上の年金保険料の支払いを義務付ければ、退職後に受け取れる年金額が増える、というのは脳天気な見通しと言わざるをえない。義務付けても、企業側には、非正規雇用者として雇って事業主負担保険料の支払いを回避するという選択肢が残っていることを、すっかり忘れているようだ。企業に事業主負担保険料を負担させれば、少ない本人負担でより多くの給付が受け取れる、という錯覚に頼って、なし崩し的に事業主負担保険料を徴収する期間を増やせば、シニア就労においてさらに非正規雇用を増やす可能性がある。
 しかも、年金については、全員加入の基礎年金の保険料は、原則本人負担分のみであり、60歳未満にしか支払い義務はないから、70歳以上で非正規雇用になると、厚生年金には入れず、追加で年金保険料を払って退職後の年金給付を増やすという選択肢はない。だから、非正規雇用が拡大すれば、シニア就労による保険料徴収拡大も望めない。加えて、04年の年金改革で厚生年金の保険料率は17年以降労使合計で18・3%と固定して、それ以上に企業負担を増やさないと決めたことからも逸脱することになる。
 こう考えれば、企業に隠れた負担を負わせつつ、少ない本人負担でより多くの給付を受けるという社会保障改革は、悪い副作用が大きすぎて、結局シニアを不幸にする。
もっと違うところに解決策がある。それは、高齢者同士で世代内の助け合いを強化することである。確かに、社会保障の従来の仕組みは、世代間の助け合いを重視してきた。経済力が弱った高齢者を、働き盛りの現役世代が助ける。その美しい姿は、あいにく急速な少子高齢化によって持続不可能になった。世代間の不公平も拡大しており、現役世代や企業の負担に寄りかかることはもうできない。
 ところが、今の現役世代よりも恵まれた経済力を持つ高齢者は、幸いにも多くいる。わが国の家計の金融資産の65%は60歳以上の人が保有している。他方、退職後の年金額に不安がある人も多くいる。
 より多く年金給付を受け取れる高齢者と、わずかしか受け取れない高齢者がいる中で、わずかしか受け取れない高齢者をどう助けるか。社会保障の従来の仕組みでは、現役世代や企業に負担させることで解決しようとしたが、それでは世代間格差と非正規雇用化を助長するだけである。
 そうではなく、より多く年金給付を受ける高齢者に、適正に所得税を納めてもらうことで、それを財源として年金給付の少ない高齢者を助ける方策が、未着手のまま残されている。
 その方策とは、公的年金等控除の縮小である。公的年金等控除額が多くなるほど、課税対象所得が少なくなり、所得税負担が減る仕組みとなっている。より多く年金を受け取る高齢者でも、控除が手厚いため、所得税をほとんど払わずに済んでいる。
 働いている高齢者は、年金給付に与えられる公的年金等控除に加えて、給料に対して与えられる給与所得控除も併用できる。そのため、同じ課税前収入でも、給料しか稼いでいない現役世代よりも控除額が多くなって、所得税負担が軽くなる。これにより、筆者の分析では、同じ課税前収入でも、高齢者の9割は現役世代よりも税負担が軽くなっている。
 給料のみの現役世代では、850万円以上になると給与所得控除は上限に達して増えない仕組みとなる(20年以降)。給与収入で850万円だと、ね上位10%の所得に位置する。それに対応した形で公的年金等控除を縮小するならば、年金収入で400万円以上得ている「高所得者」の控除は頭打ちにして、それ以上控除額が増えない形にすることで、高所得高齢者に現役並みの所得税負担を求めることができる。
 将来的には、事業主負担保険料の一部を、公的年金等控除の縮小で増える所得税収や消費税の税収で補えるようになれば、社会保険料による非正規雇用の増加を防ぐこともできるだろう。
 目に見える消費増税ばかり気にして、隠れた形で企業負担が増えることに目を背けていると、かえってわれわれの老後は安心できないものになる。いくつになっても意欲さえあれば働ける環境を整えるためには、企業に過剰な負担を求めないことも必要だ。社会保障制度の中で、「人生100年時代」にふさわしい負担と給付のバランスを追求してゆくことが重要である。

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